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月下の出会い


 その時、背後から大きな騒音と共に体を押すほどの強い風が襲い掛かり思わず数歩前に進む。
 何が起こったんだと後ろを振り返ると、先ほどまで無かったモノが広場の中央にあった。それは土埃が舞っていてはっきりと姿が見えないが大きな塊の様だ。
 あまりの突然の出来事に頭が働かず、逃げるという行動すら思いつかずに、土埃の向こうにある非日常をただ、じっと見つめていた。
 どれほど時間が経ったか。
 舞っていた砂の多くが地面に戻って行き始めた時、大きな塊の一部が動いた。
 まだ少し土埃が残ってはいるが、月明かりに照らされて、それが何なのか十分に分かる程度までには治まっていた。
 どうやら動いたモノは大きな塊の上に乗っている、人だったようだ。
 一瞬のうちに襲い掛かってきた驚きが落ち着いてくると、どうやら脳は思考を止める様で、ぼんやりと起き上がった人を見つめ続ける。
 そうしている内に塊の上にいる人がこちらに気づいたらしく、塊の上から降りてこちらに来る。
「あんた、此処で何をしているんだ」
 声を掛けられた事で反射的に体がビクリと震えた。
 動き出した思考は混乱していて、言わなければならないと分かっていても、言うべき言葉が出てこない。
「新人、じゃないよな。一般人か」
 目の前まで来た人は男性で、暗闇の中に溶け込めるような黒い服を身にまとっている。今は月の光の下にいるので、逆にその黒が浮き上がってしまっている。
 月に照らされた男性を見て、ふと綺麗な人だなと思った。当然そう思った時には、突然大きな塊と共に公園の真ん中に現れた不審者などという事は頭の中からすっかりと消えていた。

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夜の公園


 家から10分ほど歩いたと所に山を切り開いて造られた公園がある。その公園の多目的広場には多くの桜の木が植えられている。
 寒さが厳しかった日々が過ぎ、段々と温かくなり、日中の日が高い時間帯なら上着が必要ないほどに気温が高くなって数日が経った。
 学校に植えられている桜は綺麗に咲き、もう満開を過ぎている。公園の桜もきっと多くの桜が美しく咲いているだろう。
 はやる気持ちを抑えて夜に浮かび上がる景色を楽しむ。夏になると五月蝿いくらいに聞こえるカエルや虫の泣き声がないため、非常に静かだ。
 周りの景色を楽しんでいても自然と足が速くなっていたようで、あっという間に公園に着いた。
 公園内に入り、広場に向かって行くと、遠くからでも月に照らされて、桜の姿が見える。歩みは自然と駆け足に変わった。
 今夜は風が無い。だからこそ、雲で月が隠される事無く光が地上に降り続く。
 月光に照らされた桜は神秘的でいて、少し恐ろしい雰囲気を醸し出している。月に照らされた桜の姿に気圧されて厚みを止めた。
 月明かりの中で静かに立っている桜は、まだ満開とまではいかないが、とても美しい。
 怖気付いたのは一瞬で、直ぐにその美しさに心引かれた。特に向かって右手奥にある一際大きな桜の木から目が離せない。
 引き寄せられるように大木に向かう。
 あと数歩で気の根元に着く所で足を止めて大木を見上げる。





 タイトルを考えるの苦手。


夜の明かりの中へ


 窓の外を見ると、真ん丸のお月様が夜空に浮かんでいた。
 雲が殆ど無く、月の光は絶え間なく地上に降り注いでいる。月の光で浮かび上がる見慣れた風景は、日中に見るそれとは全く雰囲気が違う。まるで知っている場所と似た別の場所に迷い込んでしまったみたいだと思った。
 あり得ない自分の考えにくすりと笑い、外を見るために開けていたカーテンを閉めた。
 カーテンで遮られていても、室内に入り込んで中を仄かに明るくする月明かり。
 どうしてか、堪らなく、その光と夜の空気を直に肌で感じたくなった。
 思いついたら即行動。親しい人から美点であり欠点でもあると言われるその行動力を遺憾なく発揮する。ハンガーに掛けてある上着を引っ掴んで袖を通すと部屋を出た。
 夜遅くに家から出る事が家族に知られれば絶対に怒られる。無駄な時間を浪費しないためにも気付かれないように慎重に玄関へ歩く。音を立てないように注意してぎりぎり体が通り抜けられるほどの隙間を開ける。すぐさまそこに体を滑り込ませて外に出るとまたゆっくりと扉を閉めた。
 大きな音を立てる事無く出られた事に安心して大きく息を吐いた。
 玄関を離れて大きく深呼吸する。
 緊張から解放されたからなのか、これから通って行く見慣れた場所の見慣れない一面への期待からか、胸がドキドキと高鳴っている。
 辺りをぐるりと一回り見てから、目的の場所に向かって足を踏み出した。

はじめましてのアオ

初めて見たキミは アカい大地の上で横たわっていた

アカの中にキミの綺麗な髪が広がっていて

とても美しいと 思ったんだ



ボンヤリとボクを見つめるその瞳は

暗くかげっていたけれど

キミの髪と同じくらい キレイなアオだった



あのアオが光り輝いたなら どれほどウツクシイのだろうか


気が付くと 僕はキミのイノチを引き留めていた



シロかった肌に アカが戻る

幽かに震える キミのまぶた

早くその奥にある アオを見たい


ボクはキミを見つめた

キミはボクを見つけた


やあ、はじめまして

キミの新しいセカイ

大地が落ちたあと 3


「うん。明日から、また賑やかになるね」
「そうだな」
 少しの間2人は無言で遠くを見つめる。
 先に口を開いたのはオルガだった。
「俺さ、今年は1人でさせてもらえる事になったんだ」
 イファは目を見開き、オルガを見る。
 オルガは照れつつもさっきよりも嬉しそうな顔をしている。驚きで少しの間呆然としていたことに気づいたイファは、慌ててオルガにおめでとうと言う。
「オルガも一人前として認められたんだね」
「一応な」
 明後日にこの集落で飼育している羊たちの毛刈りが行われる予定だ。取れた羊毛は冬を越すための防寒具にもなり、貴重な収入源にもなる。集落の大事な生産物である羊毛を刈るのは大変な重労働だ。
 羊毛は一枚の布の様になるようにきれいに刈らなければならない。そして時間がかかってしまえば、動きを封じられている事に羊はストレスを覚えてしまう。作業は丁寧かつ素早く行う必要がある。
 この作業が出来ると認められるという事は、この集落では成人男性として認められるための1つの通過点となっている。
 オルガは今年で15歳になる。
 つい最近まで一緒に平原を駆け回って遊んでいた幼馴染の成長を感じ、イファは自分の中でしっかりと納まっていた大事なモノに隙間が出来てコロコロと不安定に動くようになってしまった様な、落ち着かない気持ちになった。
 それがどういう思いから生じたのか分かる前に、イファは別の事に思考を向ける。
「オルガは、おじさんの後を継ぐんだよね」
「ああ、そのつもりだよ」
「あの山の向こうへは、行きたいと思わないの?」
 じっとオルガを見つめる。
 イファの表情はとても穏やかだ。だが、どこか寂しそうな印象を受ける。
「別に。今のところ都会に行かなきゃいけない用事なんてないし」
 オルガは山々のほうを見つめながら答える。
 興味が無さそうに答える彼の様子を見て、イファはほっと胸を撫で下ろした。
 集落の若者の多くが都市に行く事に憧れを持っている。女性は憧れのままで終わることがほとんどだが、男性は出稼ぎに出る人たちがいるため女性より高い確率で集落を出ていく。イファの義兄が出稼ぎの成員に入った後、何人か引退し、集落に戻って来ていたが、新たに都市に出ていった者はいない。
 そろそろ新しい成員を選出する話が出ているとイファは義父から聞いていた。  選ばれるのは成人した者。今年、一人前と認められるオルガも候補に挙がるだろう。だが、基本的には本人の意思が尊重されるので、ここで暮らす事を望むならば彼は選ばれないだろう。

大地が落ちたあと 2


 数十分後、集落に着くと羊たちを放牧用の柵の中に入れながら全部いるか数を数える。柵の中に入れてしまえば、後は時間になれば開いている入り口から勝手に隣接している小屋の中に入ってくれる。
 全て柵の中に入れた後、しっかりと柵の入り口を閉める。外れない事を確認する。
 道具を片付けている養父に作業が終わったことを告げると先に帰っているように言われた。イファは分かったと答えて、ゆっくりと集落の中を歩いていく。
 太陽は既に高い位置を過ぎ、遠い山の向こうに向かって沈み始めている。日が山の向こうに落ちれば、夜が来る。今日の夕飯は何だろうかとほんの少し空腹を覚えながら、イファは真っ直ぐ家には帰らず集落の外れにある小高い丘に向かう。
 そこから見える山々を越えた先に、多くの人が集まって住んでいる都市がある。人が集まれば、色々なものが集まる。この平原に住んでいては滅多に手に入らないものが沢山あるらしい。
 この集落には一年の大半を平原から離れ、出稼ぎに出ている人たちが多くいる。彼らが語ってくれる話を聞いて、一度は都市へ行ってみたい、と憧れを持つ人は多い。養父母の実子であり、イファの義兄にあたる人も平原を離れ、傭兵として働いている。彼が帰省した時に彼から色々な話を聞くが、イファは集落を離れて都市に行きたいと思ったことはない。
 ずっと平原で暮らしていたい。
 遠く離れた土地へ行きたいと言う人の気持ちが、イファには理解できなかった。
「イファ、お疲れ様」
 背後から聞こえてきた声に振り返る。少年が1人、丘を登ってきていた。
「オルガ」
「羊たちの様子はどう?」
「怪我をしている子はいないし、みんな体調が良いよ」
「そっか。イグルさんたちは予定通り明日の昼頃到着するってさ。今回はリューグも帰って来るし、良かったな」
 嬉しそうに笑顔で言うオルグにつられ、イファも自然と顔に笑みが浮かぶ。

大地が落ちたあと 1


 平原のずっと向こう、地面と空の間をぼんやりと眺めていたら、柔らかく温かいものが手に触れた。何だろうと下を見ると、羊が手と体の間に顔を入れようとしていた。少し手を上げて好きなようにさせてやる。
 さらに体にすり寄って甘えてくる羊の毛をゆっくり撫でながら周りを見渡す。
「イファ、戻るぞ」
 呼ばれてようやくイファは遠くを見ることをやめた。羊から手を離して歩き出す。
「はい、義父さん。みんな、帰るよ」
 イファが声をかけると、まだ草を食べていた羊たちが顔を上げた。彼女が歩き出すと羊たちものそのそ彼女の後に続いて動き出す。
 全ての羊たちが付いてきているか時々振り返って確認する。案の定立ち止まって草を食べ始めている羊を見つけ、口笛を吹いて注意を引く。置いて行くよ、と大きな声で呼びかければ少し急ぎ足で追いかけてくる。それを確認して再び前を向く。
 穏やかな風が吹き抜けていく。イファは平原に吹く風が好きだ。幼い頃は険しい山岳地帯に住んでおり、山々の間から吹き抜ける風は冷たく強かった。それに比べると平原の風は穏やかだ。養父母の世話になるようになって環境の違いに大いに驚いたのを今でも鮮明に覚えている。
 平原は優しい。日が出ている間は凍てつくような寒さもなく、地形による脅威もほとんど無い。
 この土地はとても心地よいのだが、イファは違和感を感じていた。自分はここではない所にいるべきなのではないか。そんな考えが時折脳裏に浮かぶ。今の生活に不満は一切ない。集落の外れに倒れていた素性の知れない上に名前以外何も話さない子供を養父母は引き取って育ててくれた。集落の人々もよそ者のイファを受け入れてくれている。
自分の中の違和感に目をそらしてイファは養父の後に続く。

翼を隠す少女

広い大地が広がる平原
穏やかな風を受ける少女
ずっと遠くを見つめる瞳は
記憶に埋もれた何かを探す

少女は恐れている いつか来る日を
少女は知っている 翼を広げる時を

大地は空から海へと還り
翼を持つ者は空を捨てた
罪を忘れられない者は
大地を想い空に残った

起こしてはならない 昔の過ちを 
繰り返してはならない 昔の過ちを

少女は遠く見つめる
優しい風を受け止めながら
ここではないどこかへ思いを馳せながら

小話

今、目の前の男から言われた事が理解出来なかった。混乱する頭の片隅で相変わらずいい男だなとどうでもいい事を思った。

「どうして、今頃」

「ずっと考えていた。このままではいけないと」

 自分だけのんきに来るべき日を待っていたのだと分かって苛立ちが腹の中に沸き立つ。それを表に出さないようにすると、混乱していた頭がすっきりとした。

「それで、私にどうして欲しいの?」

 じっと男を見つめて問いかけると相手は眉間にしわを寄せた。それを見てさらに苛立ちが募った。

「何も。何も君には望んでいない」

 いらない、とはっきりと言われてしまった。腹の中で渦巻いていた苛立ちが消え、体が冷えていく。
 もう、この人にとって、自分は何の価値もないのだ。

「そう、分かった」

 目を伏せて視界から男を消した。





 ぱっと設定を思いついて書き出したけど、その思いついた設定をきちんと書き起こす前に忘れた。続かない。




寒くなってきましたね。

「寒い」

「もうすぐ冬だからね」

「寒い」

「冬といえば鍋だよね」

「寒いんですけど」

「でも今日は材料が無いから鍋できないね」

「人の話を聞け」

「聞いてるよ。寒いって言うから、温かくなる鍋食べたいねって言ってるじゃん」

「そうじゃなくて!なんでお前の部屋に暖房も無いんだ!入れろよ!!」

「やだ、金ないもん。無くても死なないもん」

「・・・」

「・・・」

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