零れ話
ポッと浮かんだ話を無責任に投下。
大地が落ちたあと 2
数十分後、集落に着くと羊たちを放牧用の柵の中に入れながら全部いるか数を数える。柵の中に入れてしまえば、後は時間になれば開いている入り口から勝手に隣接している小屋の中に入ってくれる。
全て柵の中に入れた後、しっかりと柵の入り口を閉める。外れない事を確認する。
道具を片付けている養父に作業が終わったことを告げると先に帰っているように言われた。イファは分かったと答えて、ゆっくりと集落の中を歩いていく。
太陽は既に高い位置を過ぎ、遠い山の向こうに向かって沈み始めている。日が山の向こうに落ちれば、夜が来る。今日の夕飯は何だろうかとほんの少し空腹を覚えながら、イファは真っ直ぐ家には帰らず集落の外れにある小高い丘に向かう。
そこから見える山々を越えた先に、多くの人が集まって住んでいる都市がある。人が集まれば、色々なものが集まる。この平原に住んでいては滅多に手に入らないものが沢山あるらしい。
この集落には一年の大半を平原から離れ、出稼ぎに出ている人たちが多くいる。彼らが語ってくれる話を聞いて、一度は都市へ行ってみたい、と憧れを持つ人は多い。養父母の実子であり、イファの義兄にあたる人も平原を離れ、傭兵として働いている。彼が帰省した時に彼から色々な話を聞くが、イファは集落を離れて都市に行きたいと思ったことはない。
ずっと平原で暮らしていたい。
遠く離れた土地へ行きたいと言う人の気持ちが、イファには理解できなかった。
「イファ、お疲れ様」
背後から聞こえてきた声に振り返る。少年が1人、丘を登ってきていた。
「オルガ」
「羊たちの様子はどう?」
「怪我をしている子はいないし、みんな体調が良いよ」
「そっか。イグルさんたちは予定通り明日の昼頃到着するってさ。今回はリューグも帰って来るし、良かったな」
嬉しそうに笑顔で言うオルグにつられ、イファも自然と顔に笑みが浮かぶ。
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