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また、会う日まで。1

金属同士が激しくぶつかり合う、鈍い音。
 鼻につく、鉄の臭い。
 立ち昇る土埃りの中を、時折足を取られそうになりながら進む。

 息を吸う度に喉が痛む。
 疲労が重しとなり、体に積み重なっていく。
 体は悲鳴を上げているが、足を止めるという事など、ここで立ち止まるという事など、頭の片隅にすら思い浮かばない。
 ただ、ただ。
 前へ、前へ。

 あの人がいる場所へ、進んでいく。

 突然、身にまとっている外套が引っ張られ、体が傾く。
 踏ん張って体勢を戻すことは、疲労が蓄積された足では成すことが出来ず、そのまま力に引きずられ、体が地面へと倒れる。
 引っ張られた方を見ると、剣を振り上げている人がいた。

 あ、と思う。

 次の瞬間には、目線の先にいた人はゆっくりと後ろの方へと倒れていった。

 すぐに体を興して走り出す。
 ただ、前を向いて走り出す。
 大丈夫。私のそばには、彼らがいる。
 だから、前だけを見て、進んでいく。

 周りにはきっとたくさんの音が溢れかえっているのだろう。
 けれど、今は耳鳴りの様な高い音がはっきりと聞こえるのに、その他の音は、とても遠い。
 そんな中、はっきりと声が聞こえた。

 懐かしく感じる
 聞きたくてたまらなくて
 でも、それが叶わなくて
 心が苦しくて
 潰れそうになる

 求めてしまう自分を、ずっと別の感情で覆い隠していた。
 会いたい、ただそれだけだたのに。

 一緒にいたい。
 ただ、それだけだったのに。

 目が熱くなる。
 まだだ、まだなんだ。

 目的地まであと少し。


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思うからこそ


 私はあの人と共に生きていくことはできない。

 あの人が大を選ぶならば、そこから零れ落ちた小に私は手を伸ばそう。

 だから、私はあの人と一緒にはいられない。

 あの人が選ぶ道とは逆を目指して進むから。



 愛している。

 そう告げた男に対して女はその思いを受け取ることができないと分かっているため、困った顔をして男を見る。

 貴方の気持ちは嬉しいと思う。けれど、私はあなたへ同じような愛情を向けることはできない。

 女は男を愛している。けれど、それは長い時間を共にし、苦楽を分かち合った共としての愛だ。

 女は知っていた。男が自分ことを愛してくれていることを。

 自分があの人を求める感情と同じ物を、男が自分に対して持っているのだと。

 男も知っていた。女の中にはあの人がいて、女の一番大事な愛をそいつから奪えないことも、女が他の誰かにそれを向けることはないと。

 だからこそ、女は大勢の人々に愛を向けることができるのだ。

 あの人のように。



愛の形

 多くの人からの望みを託された男がいた。
 明るく、朗らかで勇敢な男は、多くの人に好かれた。
 そんな男のそばにはいつも1人の女性がいた。
 それなりの器量を持つその女性は、男にとってかけがえのない人だった。
 ずっと男をそばで支えた彼女と男が結ばれたのは必然だった。
 戸惑いながらも男の申し出を受けた彼女。
 だが、彼女には男には決して明かせない、胸に秘め続けた想いがあった。
 彼女は男の親友のことがずっと好きであった。
 寡黙であまり言葉を発しない。男と正反対な性格の親友が、時折見せる笑顔が彼女はとても好きだった。
 親友のことが好きだからこそ、彼女は男の申し出を受けた。
 愛する人である彼が、最も望んでいることは、男の幸せだったから。
 男のために生涯をかける彼は、決して男が愛している彼女の想いを受け入れはしないと彼女はわかっていた。
 だから、彼女は男を愛そうとした。やがて愛するようになった。
 数年後、男の親友が身を固めると男から聞いた彼女は衝撃を受けた。
 子が生まれ、男と共に子を育むうちに薄れていったと思っていた彼への思い。それが少しも衰えずに彼女の中には息づいていた。
 胸に走る痛みで、そのことを彼女は自覚する。
 相手の故郷で式を挙げると聞き、彼女は幼い子どもを理由に、男と一緒に式へ参列することを拒否した。
 彼の隣に自分ではない女がいる光景を見てしまったら、今の幸せが壊れてしまうと彼女は確信していた。
 男の親友が他の女と結ばれた日の夜。彼女はかつて彼からもらい、ずっと奥に仕舞っていた髪飾りを握りしめ、静かに涙を流した。

 それから十数年、彼女は男の親友と会うことなく生きていく。
 子が1人立ちした後、彼の重篤の知らせが男のもとに届いていた。
 男と共に彼のもとへ向かった彼女は、昔のたくましい体を持っていた彼の、病によってやせ衰え、弱々しくなった姿を目にする。
 彼の看病で無理がたたっていた彼の妻に代わり、彼女が少しの間、彼の看病をすると申し出る。
 彼の妻は少し休むために、別室へと行く。
 男も仕事で片付けなければならない案件があると言い残し、部屋を出ていった。
 彼女は数十年ぶりに、彼と2人きりになった。
 彼は彼女に色々なことを聞いた。
 男の近況のこと、2人の子どものことを。
 彼女は彼を喜ばせようと、沢山話をした。
 男が酒を飲みすぎてやってしまった失敗や、やんちゃだった子どもが大人になり、手がかからなくなったことなど、男や子どもに関する事を、思いつく限り話す。
 ある程度話終えた後、彼女は長く話過ぎたと反省し、彼に休むように促す。
 掛け布団をなおそうとしたところで、彼に手を取られる。
 驚く彼女に、彼は静かに言葉を紡ぐ。

 君は、幸せか、と。

 彼女は唇を噛み、崩れた笑顔で、あなたが幸せなら、と応えた。

 それから数日後、男の親友は息を引き取った。
 女は涙を流し、愛した人を思って、泣いた。


 男の親友もまた、彼女を愛していた。
 それでも、彼は彼女と共に生きる道を選ぶことはできなかった。
 同じくらいに男のことも愛していたから。男が愛する女性を奪って共に生きる罪悪感に、彼は耐えられなかった。

英雄と、傭兵の話

 仕事で行った町の組合で、俺はあいつに会ったんだ。

 俺は受けていた仕事が終わった報告と、次の仕事を探しに組合に行ったんだ。その時、ちょうどあいつが1人で組合に仕事の依頼の申請を出しに来ていた。
 受付にいるあいつを見た第一印象は、ひょろっとした軟弱そうな奴。
 ま、そんなものは直ぐに払拭してしまうんだが。
 目だよ。
 あいつと目が合った瞬間、思ったんだ。あれは絶対に何かやらかす奴だ。あいつといれば面白いことが起こるってな。
 久ぶりに心が沸き立ったよ。
 俺は自分の直感を信じて、迷う事なく受付であいつの依頼を引き受けたいと言った。
 突然の申し出にあいつも受付の担当も困惑したが、まあ、俺の組合からの評価が良かったこともあって、俺はあいつの依頼を受けることが出来た。
 それで、あいつらの護衛として一緒に旅をすることになったんだ。

 

 

暑い日


見上げる空 葉の隙間から見える青
耳鳴りみたいなセミの声

べたつく肌を撫でる風
僕はぼんやりと身をゆだねる

聞こえる音に混じるもの
どうしたのと問いかける声

面倒くさがりの僕は 何も答えず空を見る
返事をしろという要望に 僕は何と聞き返す

それだけの反応に 君はどうして笑うんだ

最後の夏

君と過ごす時間

あと少し

あの時くれた君の言葉を抱いて 今も僕は走り続ける


異界の少女 ツェツィーリアの話


 濃い霧の中をどのくらい歩いただろう。
 自分がどこに向かい、何のために進んでいるのか分からなくなった頃、目の前の霧が晴れ、とても綺麗な空が見えた。

 青い青い空。
 ずっと長い間、空を見上げる事なんてなかった。

 空からは恐ろしいものが落ちて来るから。
 大切なものを奪っていくものがやって来る空が、大っ嫌いだった。

 なのに、久しぶりに見た空は、とても綺麗で。
 どうしようもなく、涙が流れた。

① 異界の少女 ツェツィーリアの話


 この世界に来て、 私は初めて恋を知った。

 今日は私を保護してくれた国の王子様の結婚式。

 私は初めての恋に、別れを告げる。
 新しい一歩を踏み出すために。
 いつもそばで支えてくれた、彼と向き合うために。


 ある日、ある国で、一筋の光が地上から空へと現れた。
 それは、この世界とは異なる世界から人が渡って来たことを知らせる光。

 光の下には一人の少女がいた。
 異界からやって来た少女。
 異界の者は幸運をもたらす。
 古くからの言い伝えから少女を守るため、国を護る騎士が少女を保護し、王宮へと連れて行く。
 連れて来られた王宮で、少女は一人の王子と貴族の令嬢と出会った。

はじめましてのアオ

初めて見たキミは アカい大地の上で横たわっていた

アカの中にキミの綺麗な髪が広がっていて

とても美しいと 思ったんだ



ボンヤリとボクを見つめるその瞳は

暗くかげっていたけれど

キミの髪と同じくらい キレイなアオだった



あのアオが光り輝いたなら どれほどウツクシイのだろうか


気が付くと 僕はキミのイノチを引き留めていた



シロかった肌に アカが戻る

幽かに震える キミのまぶた

早くその奥にある アオを見たい


ボクはキミを見つめた

キミはボクを見つけた


やあ、はじめまして

キミの新しいセカイ

小話

今、目の前の男から言われた事が理解出来なかった。混乱する頭の片隅で相変わらずいい男だなとどうでもいい事を思った。

「どうして、今頃」

「ずっと考えていた。このままではいけないと」

 自分だけのんきに来るべき日を待っていたのだと分かって苛立ちが腹の中に沸き立つ。それを表に出さないようにすると、混乱していた頭がすっきりとした。

「それで、私にどうして欲しいの?」

 じっと男を見つめて問いかけると相手は眉間にしわを寄せた。それを見てさらに苛立ちが募った。

「何も。何も君には望んでいない」

 いらない、とはっきりと言われてしまった。腹の中で渦巻いていた苛立ちが消え、体が冷えていく。
 もう、この人にとって、自分は何の価値もないのだ。

「そう、分かった」

 目を伏せて視界から男を消した。





 ぱっと設定を思いついて書き出したけど、その思いついた設定をきちんと書き起こす前に忘れた。続かない。




寒くなってきましたね。

「寒い」

「もうすぐ冬だからね」

「寒い」

「冬といえば鍋だよね」

「寒いんですけど」

「でも今日は材料が無いから鍋できないね」

「人の話を聞け」

「聞いてるよ。寒いって言うから、温かくなる鍋食べたいねって言ってるじゃん」

「そうじゃなくて!なんでお前の部屋に暖房も無いんだ!入れろよ!!」

「やだ、金ないもん。無くても死なないもん」

「・・・」

「・・・」

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