零れ話
ポッと浮かんだ話を無責任に投下。
夜の明かりの中へ
窓の外を見ると、真ん丸のお月様が夜空に浮かんでいた。
雲が殆ど無く、月の光は絶え間なく地上に降り注いでいる。月の光で浮かび上がる見慣れた風景は、日中に見るそれとは全く雰囲気が違う。まるで知っている場所と似た別の場所に迷い込んでしまったみたいだと思った。
あり得ない自分の考えにくすりと笑い、外を見るために開けていたカーテンを閉めた。
カーテンで遮られていても、室内に入り込んで中を仄かに明るくする月明かり。
どうしてか、堪らなく、その光と夜の空気を直に肌で感じたくなった。
思いついたら即行動。親しい人から美点であり欠点でもあると言われるその行動力を遺憾なく発揮する。ハンガーに掛けてある上着を引っ掴んで袖を通すと部屋を出た。
夜遅くに家から出る事が家族に知られれば絶対に怒られる。無駄な時間を浪費しないためにも気付かれないように慎重に玄関へ歩く。音を立てないように注意してぎりぎり体が通り抜けられるほどの隙間を開ける。すぐさまそこに体を滑り込ませて外に出るとまたゆっくりと扉を閉めた。
大きな音を立てる事無く出られた事に安心して大きく息を吐いた。
玄関を離れて大きく深呼吸する。
緊張から解放されたからなのか、これから通って行く見慣れた場所の見慣れない一面への期待からか、胸がドキドキと高鳴っている。
辺りをぐるりと一回り見てから、目的の場所に向かって足を踏み出した。
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