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月下の出会い


 その時、背後から大きな騒音と共に体を押すほどの強い風が襲い掛かり思わず数歩前に進む。
 何が起こったんだと後ろを振り返ると、先ほどまで無かったモノが広場の中央にあった。それは土埃が舞っていてはっきりと姿が見えないが大きな塊の様だ。
 あまりの突然の出来事に頭が働かず、逃げるという行動すら思いつかずに、土埃の向こうにある非日常をただ、じっと見つめていた。
 どれほど時間が経ったか。
 舞っていた砂の多くが地面に戻って行き始めた時、大きな塊の一部が動いた。
 まだ少し土埃が残ってはいるが、月明かりに照らされて、それが何なのか十分に分かる程度までには治まっていた。
 どうやら動いたモノは大きな塊の上に乗っている、人だったようだ。
 一瞬のうちに襲い掛かってきた驚きが落ち着いてくると、どうやら脳は思考を止める様で、ぼんやりと起き上がった人を見つめ続ける。
 そうしている内に塊の上にいる人がこちらに気づいたらしく、塊の上から降りてこちらに来る。
「あんた、此処で何をしているんだ」
 声を掛けられた事で反射的に体がビクリと震えた。
 動き出した思考は混乱していて、言わなければならないと分かっていても、言うべき言葉が出てこない。
「新人、じゃないよな。一般人か」
 目の前まで来た人は男性で、暗闇の中に溶け込めるような黒い服を身にまとっている。今は月の光の下にいるので、逆にその黒が浮き上がってしまっている。
 月に照らされた男性を見て、ふと綺麗な人だなと思った。当然そう思った時には、突然大きな塊と共に公園の真ん中に現れた不審者などという事は頭の中からすっかりと消えていた。

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