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12話没案

 自室に戻るとそこにはいつの間にかいなくなっていたラオフェントがいた。
「おかえり、フィー」
 お茶を飲みながら居間でのんびりとくつろいでいる姿を見て、この人はこんな人だっただろうかとフィリネグレイアは思った。
「執務室におられなかったのでお帰りになられたのだと思っていました。どうしてこちらに?」
 ゆっくりとラオフェントが据わっているソファの向かい側のソファに行き、座る。
 彼女が座るのを待って、ラオフェントは口を開いた。
「部外者の私がいつまでもあそこにいるわけにはいかないだろう?どうしようか悩んでいたらミュレアに誘われたんだ.」
 名前が出てきた侍女の方を見ると、彼女は静かに微笑んだ。
「陛下でしたら起きて直ぐに仕事に戻られましたよ」
「聞きたいことは聞けた?」
 フィリネグレイアは首を振った。
「今はまだ」
「そう」
 フィリネグレイアの短い言葉にラオフェントも短い言葉を返してお茶を飲む。



 ここでつまって悩んだ末、没に。
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再び没案(23話)

 丁重にトリウェルの誘いを断り、フィリネグレイアは一旦自室に戻った。本当は彼と一緒に執務室へ向かったほうが良いのだろうが、彼女はどうしても連れていきたい人物がいた。

「サヴィアローシャ、ミュレアは戻っているかしら」

 部屋に入って直ぐの所にいたサヴィアローシャに問う。何やら急いでいるフィリネグレイアの様子にサヴィアローシャは驚いた。

「え、は、はい。寝室の方にいますが」

 ミュレアの返事を聞いたフィリネグレイアは寝室へ向かう
 フィリネグレイアと共に帰って来たトリエにどうしたのかとサヴィアローシャは目で問いかけるが、彼女も何故フィリネグレイアの様子が昼間と違うのか全く分からない。
 
 寝室に入るとトーチェと共に寝具を整えているミュレアがいた。

「ミュレア、後の仕事は他の者に任せてわたくしと一緒に来なさい」

 何時もなら決してしないフィリネグレイアの高圧的な命令にトリエは驚きに目を見開いた。空いているドアから様子をうかがっていた他の人たちも同じ反応をした。
 言われた本人であるミュレアは特に変わった反応もなく、いつも通りの反応を返す。

「かしこまりました」

 ミュレアの返事を聞いた後、フィリネグレイアは踵を返し寝室を出る。その後にミュレアが続く。

「申し訳ないけれど、ミュレアの分の仕事は皆で分担して行なって下さい」

 そう笑顔で言い残し、フィリネグレイアは部屋を出ていった。ミュレアも一礼して出ていく。
 見送った他の人たちはフィリネグレイアとミュレアの様子に首をかしげながら仕事に戻っていった。
 一方で部屋から出て目的地へ向かうフィリネグレイアは最初の勢いをなくしたままゆっくりした歩みに変えていた。

「お嬢様、先程の態度はまだ彼女たちに見せてはなりません。どこでまた情報が漏れるか」

 他の人に聞こえないように小さな声でフィリネグレイアを叱責した。

「分かっているわ」

 口ではそういいながらも、彼女に反省の色は無く、それを読み取ったミュレアは気づかれないように小さく溜息を吐いた。

「でも、今からわたくしの疑問の答えを陛下からお聞きすることが出来れば、問題ありません」

没案2


 その沈黙を破ったのは青年だった。

「お初にお目にかかります。私は王国騎士団第三軍隊所属、ルインと申します。先日より国王陛下よりフィリネグレイア様の護衛の任を申し付かりました。以後お見知りおきを」

 そうして騎士の礼をとった青年をフィリネグレイアは内心呆気に取れられて見ていた。何という事だろう。どうして自分の護衛にこの人が付いているのだ。

「陛下が仰っていた護衛とは貴方の事だったのですね。宜しくお願い致します」

 動揺を覚られないよう、淑女の礼を完璧にやってのける。その間にフィリネグレイアは自分の心を落ち着かせようとした。

「本当は陛下からフィリネグレイア様の負担とならないよう、気付かれることなく影からお守りするようにと言われていたのですが。以後このような事がないよう気を引き締めていきますので、ご容赦下さい。」

 自分の失態を気に病んで表情を曇らせた青年に、フィリネグレイアは素直に自分の本心を言う。

「負担なんてとんでもない。わたくしの護衛をしていただいて、大変感謝しています。ですから、お気になさらずに」

「私にはもったいないお言葉です」

 そう言って謙虚な態度をとるルインに、フィリネグレイアは自分の立場の変化を改めて実感した。そして、言うべき言葉を間違ったとも感じた。
 今まで護衛する者を雇うという状況にも、立場にもいなかった為その人たちに対して自分がどのように対応すれば良いのか戸惑ってしまう。だが上に立つ者がそのような弱音を漏らしてはいけない。だから、先程の「申し訳ない」という感情を含ませた自分の言葉は、青年にかける言葉として不適切だった。
 ならば、自分はどのような態度と言葉で、このような人々に接すれば良いのだろうか。彼女はその答えがまだ明確には分からなかった。

「これからも宜しくお願いします、ルイン。わたくしは資料集めをしますので、これで失礼します」

 フィリネグレイアはそう言ってルインから離れ、最初の目的を果たすため行動を開始する。少し経ってから振り返ると、もうそこにルインの姿は無く、フィリネグレイアは彼が護衛に戻ったのを確認した。
 これは護衛と言う名目の監視だろうか。
 そんなことを考えながら、フィリネグレイアは本の内容を確認していく。自分からは確認できない国王からの護衛。自分の視界に入らないモノを常に警戒しているわけがない。護衛、という言葉でフィリネグレイアはその存在を特に気にしてはいなかったが、今回の事でその認識が覆される。
 此方から護衛を外す、または姿を現すように言っても請け合ってくれないだろう。


第十八話の没にした話


 ここで自己紹介をした方がいいのだろうかと思いつつ、聞かれたら答えようという姿勢で青年と対峙するという考えに至った。
 この場をどう切り抜けようかと考えているうちにフィリネグレイはじっと青年を見ていた。そして青年も、フィリネグレイアを見つめている。
 そのまま、長い間二人は無言で見つめあう。もしこの場に他の人がいたら不審に思うだろうほど、二人は無言でお互いを見ていた。
 その沈黙を破ったのは青年だった。

「初めてお会いしたのにこのような事をお願いするのは無礼だと十分承知しておりますが、もしよろしければ、また此処でお会いできないでしょうか」

 青年の誘いにフィリネグレイアは驚いた。彼は自分が何者であるか知っているだろうに、何故自分と会う約束をしようとしているのか。彼女には分らなかった。
 これは情報を得る絶好の機会であると同時に危険である。
 まだ王妃候補でしかない彼女が男性と二人で会っているという事が、他の人に知られれば厄介だ。せっかく決まった事が全て水の泡になってしまうのだ。それでも、彼から得られるだろう情報の価値を考えると、そのような事にならないよう根回しをする苦労を買っても良いと思ってしまう。
 結局フィリネグレイアは青年の提案をのむことにした。

「はい、喜んで」

 青年は断られるかも知れないと思っていたのだろう。了承の返事を言うと明らかに体に入っていた力を抜くため、溜息を吐いた。
「明後日の今日と同じ時刻に予定はありますか?」
 その日の予定を思い出してみるが、特別な予定は聞いていないし、今の時間帯は午後の授業も終わっているし特に問題はない。その事を青年に伝えると、彼は嬉しそうに微笑んだ。

「では、明後日のこの時間に、ここの書庫の前でお会いしましょう」

 青年の嬉しそうな笑顔に罪悪感と疑問を覚えながら、フィリネグレイは応える。

「分りました。楽しみにしていますね」

 その後、青年は用事があるからと書庫を出て行、フィリネグレイアは数冊の本を借りて書庫を出た。








 なんかもったいなかったんでUPしてみました。
 

 


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