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思うからこそ


 私はあの人と共に生きていくことはできない。

 あの人が大を選ぶならば、そこから零れ落ちた小に私は手を伸ばそう。

 だから、私はあの人と一緒にはいられない。

 あの人が選ぶ道とは逆を目指して進むから。



 愛している。

 そう告げた男に対して女はその思いを受け取ることができないと分かっているため、困った顔をして男を見る。

 貴方の気持ちは嬉しいと思う。けれど、私はあなたへ同じような愛情を向けることはできない。

 女は男を愛している。けれど、それは長い時間を共にし、苦楽を分かち合った共としての愛だ。

 女は知っていた。男が自分ことを愛してくれていることを。

 自分があの人を求める感情と同じ物を、男が自分に対して持っているのだと。

 男も知っていた。女の中にはあの人がいて、女の一番大事な愛をそいつから奪えないことも、女が他の誰かにそれを向けることはないと。

 だからこそ、女は大勢の人々に愛を向けることができるのだ。

 あの人のように。



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愛の形

 多くの人からの望みを託された男がいた。
 明るく、朗らかで勇敢な男は、多くの人に好かれた。
 そんな男のそばにはいつも1人の女性がいた。
 それなりの器量を持つその女性は、男にとってかけがえのない人だった。
 ずっと男をそばで支えた彼女と男が結ばれたのは必然だった。
 戸惑いながらも男の申し出を受けた彼女。
 だが、彼女には男には決して明かせない、胸に秘め続けた想いがあった。
 彼女は男の親友のことがずっと好きであった。
 寡黙であまり言葉を発しない。男と正反対な性格の親友が、時折見せる笑顔が彼女はとても好きだった。
 親友のことが好きだからこそ、彼女は男の申し出を受けた。
 愛する人である彼が、最も望んでいることは、男の幸せだったから。
 男のために生涯をかける彼は、決して男が愛している彼女の想いを受け入れはしないと彼女はわかっていた。
 だから、彼女は男を愛そうとした。やがて愛するようになった。
 数年後、男の親友が身を固めると男から聞いた彼女は衝撃を受けた。
 子が生まれ、男と共に子を育むうちに薄れていったと思っていた彼への思い。それが少しも衰えずに彼女の中には息づいていた。
 胸に走る痛みで、そのことを彼女は自覚する。
 相手の故郷で式を挙げると聞き、彼女は幼い子どもを理由に、男と一緒に式へ参列することを拒否した。
 彼の隣に自分ではない女がいる光景を見てしまったら、今の幸せが壊れてしまうと彼女は確信していた。
 男の親友が他の女と結ばれた日の夜。彼女はかつて彼からもらい、ずっと奥に仕舞っていた髪飾りを握りしめ、静かに涙を流した。

 それから十数年、彼女は男の親友と会うことなく生きていく。
 子が1人立ちした後、彼の重篤の知らせが男のもとに届いていた。
 男と共に彼のもとへ向かった彼女は、昔のたくましい体を持っていた彼の、病によってやせ衰え、弱々しくなった姿を目にする。
 彼の看病で無理がたたっていた彼の妻に代わり、彼女が少しの間、彼の看病をすると申し出る。
 彼の妻は少し休むために、別室へと行く。
 男も仕事で片付けなければならない案件があると言い残し、部屋を出ていった。
 彼女は数十年ぶりに、彼と2人きりになった。
 彼は彼女に色々なことを聞いた。
 男の近況のこと、2人の子どものことを。
 彼女は彼を喜ばせようと、沢山話をした。
 男が酒を飲みすぎてやってしまった失敗や、やんちゃだった子どもが大人になり、手がかからなくなったことなど、男や子どもに関する事を、思いつく限り話す。
 ある程度話終えた後、彼女は長く話過ぎたと反省し、彼に休むように促す。
 掛け布団をなおそうとしたところで、彼に手を取られる。
 驚く彼女に、彼は静かに言葉を紡ぐ。

 君は、幸せか、と。

 彼女は唇を噛み、崩れた笑顔で、あなたが幸せなら、と応えた。

 それから数日後、男の親友は息を引き取った。
 女は涙を流し、愛した人を思って、泣いた。


 男の親友もまた、彼女を愛していた。
 それでも、彼は彼女と共に生きる道を選ぶことはできなかった。
 同じくらいに男のことも愛していたから。男が愛する女性を奪って共に生きる罪悪感に、彼は耐えられなかった。

英雄と、傭兵の話

 仕事で行った町の組合で、俺はあいつに会ったんだ。

 俺は受けていた仕事が終わった報告と、次の仕事を探しに組合に行ったんだ。その時、ちょうどあいつが1人で組合に仕事の依頼の申請を出しに来ていた。
 受付にいるあいつを見た第一印象は、ひょろっとした軟弱そうな奴。
 ま、そんなものは直ぐに払拭してしまうんだが。
 目だよ。
 あいつと目が合った瞬間、思ったんだ。あれは絶対に何かやらかす奴だ。あいつといれば面白いことが起こるってな。
 久ぶりに心が沸き立ったよ。
 俺は自分の直感を信じて、迷う事なく受付であいつの依頼を引き受けたいと言った。
 突然の申し出にあいつも受付の担当も困惑したが、まあ、俺の組合からの評価が良かったこともあって、俺はあいつの依頼を受けることが出来た。
 それで、あいつらの護衛として一緒に旅をすることになったんだ。

 

 

暑い日


見上げる空 葉の隙間から見える青
耳鳴りみたいなセミの声

べたつく肌を撫でる風
僕はぼんやりと身をゆだねる

聞こえる音に混じるもの
どうしたのと問いかける声

面倒くさがりの僕は 何も答えず空を見る
返事をしろという要望に 僕は何と聞き返す

それだけの反応に 君はどうして笑うんだ

最後の夏

君と過ごす時間

あと少し

あの時くれた君の言葉を抱いて 今も僕は走り続ける


婚約解消時の小話

「待って下さい、ラオ兄様」
 普段なら淑女として己を律している少女が、スカートの裾が翻るのも構わず、兄と慕う青年を大声で呼び止める。
 足を止めた青年、ラオフェントは、少女を見て苦笑を浮かべた。
「こらこら、フィー。淑女がそんな風に走ってはいけないよ」
 ラオフェントに追い付いた少女、フィリネグレイアは眉間に皺を寄せ、ラオフェントを睨んだ。
「今、ラオ兄様を逃がしたら、次は何時お会い出来るか分かりませんから。焦っていつもなら絶対にしない事をしてしまっても、それは仕方のない事だと思います。それに、他に人がいる時はきちんと早歩きで来ましたからご心配なく」
 フィリネグレイアの返しにラオフェントはカラカラと笑った。
「少し会わない内にまた口が上手くなったみたいだね」
 フィリネグレイアは溜息をついて左手の人差し指と中指をこめかみに当てた。
 自分が何の為にラオフェントを追いかけて来たのか分かっているだろうに、直ぐに自分の用件を聞こうとしない。
 のらりくらりとかわそうとするラオフェントに溜息が出た。
「ラオ兄様、どうして私との婚約を破棄する事にしたのか、詳しく説明して頂けますか」
「さっき話した通りだよ」
「あれだけで私が納得するとお思いになっているというのでしたら、ラオ兄様は随分と私を軽視されていたという事ですね。私、非常に悲しいです」
 怒りを前面に押し出して、フィリネグレイアは言った。
 ラオフェントは彼女の怒りを受けても、変わらず穏やかな声音で言う。
「君を軽視しているわけないじゃないか。フィーは私にとって大事な人だよ」
「それでしたら、どうして私との婚約を破棄なさるのですか?」
 ラオフェントとフィリネグレイアは両家の繋がりを強めるために幼い頃に婚約を交わしていた。来年にはフィリネグレイアは女学校を、ラオフェントは国立学院を卒業し、その半年後に結婚する予定になっていた。
 久しぶりにオイネット家にラオフェントが訪れ、フィリネグレイアは彼と一緒に父親から2人の婚約を破棄することを告げられた。
 ラオフェントと結婚するのだと思っていたフィリネグレイアは心底驚いた。
 理由を聞けば、ラオフェントが神官になるためだという。
 ラオフェントの実家は長年優秀な武官を輩出してきた名家で、彼も幼い頃から国軍に入ることを目標に、日々鍛錬に励んでいた。
 だというのに、卒業を目前にして武の道から外れ、神に仕える神官になると言い出したラオフェントの変化に、フィリネグレイアは大きく戸惑っていた。
 何が彼を変えてしまったのだろう。
 それが何なのか、知らなければならないような気がして、フィリネグレイアの胸はざわついて仕方がない。
「うーん。どういえば納得してもらえるかな」
 ラオフェントは苦笑を浮かべつつ、フィリネグレイアに伝えるべき言葉を探す。
「私たちはずっと、用意された道を歩いてきた。その事に不満もなく、自ら進んで差し出されたものを受け取ってきた。けれど、私は自分の進む先にあるものに対して、不満を持ってしまったんだよ。だから、私は別の道を選ぶことにした。軍に入るのではなく、神官になる道をね。」
 ラオフェンとはしっかりとフィリアの目を見据えて言う。
 分かっていたのに、彼からの今まで進んでいた道を否定する言葉に胸が痛んだ。
「ラオ兄様は、軍に入るのが嫌になったのですか?」
 視線が揺れて、しっかりと定まらず、目の前に立っているラオフェンとを見ているはずなのに、フィリネグレイアは彼の姿がはっきりと認識することが出来ない。
 声が震える。
「私との結婚も」
「フィー、君は私にとってとても大事な人だよ。婚約を破棄しても、それは変わらない」
 フィリネグレイアも、婚約を破棄したくらいでラオフェントとの関係が崩れてしまうなどありえないと分かっている。それでも、長年フィリネグレイアの中にあった、彼との婚約は彼女を形作る柱の一つだ。それが奪われてしまうことに、彼女は恐怖を感じていた。
「私のわがままを君に押し付ける形になってしまうが、私はフィーにも自分で選んだ道を歩んでほしいんだ。フィーには多くの可能性が眠っている。それを私との結婚で潰してしまうのはとても惜しい。だから、君は今いる場所から飛び出して、外に目を向けてもらいたい。私と結婚して家庭を守るという、君自身が己に課した檻を壊して」
「ラオ兄様。その言葉は私の生き方を否定されているように聞こえるのですが」
「私はフィーに他の生き方にも目を向けてほしいと思っているだけだよ。そして、新しい道を歩めるだけの強さを君は持っているとも思っている。なんせ、私の大事な妹分だからね」
 そんな言い方はずるいとフィリネグレイアは思った。
 私だから大丈夫なんて期待をされたら、それに応えてしまいたくなる。自分の大事な人であればあるほど、彼らの好意を胸を張って受け止められる人間になるために。
 深く息をはいて、心を落ち着かせる。
 しっかりとこちらの目を見て話すラオフェントには迷いが無い。
 ラオフェントは決意していしまったんだと、フィリネグレイアはようやく納得した。
 もう、彼と共に歩む未来はないのだと。その事をフィリネグレイアは受け入れるしかないのだと。
「たまにはお会い出来ますか?」
「もちろん。しばらくは数年置きになってしまうだろうけれど、会いに来るよ」
 ラオフェントの返答に、フィリネグレイアは笑顔を浮かべた。

 婚約破棄の話をしてから初めてフィリネグレイアが素直に笑ったことに、ラオフェントは心の内で安堵の溜息をついた。
 ラオフェントにとって、フィリネグレイアはとても大事な人だ。
 幼い頃から彼女の双子の兄と共に多くの時間を共有してきた。
 だからこそ、彼女が仕舞い込んでしまっている感情にも気づいた。
 せっかく生まれた彼女のその思いを、彼女自身が認識せずに押し殺してしまっている事にも、気づいてしまった。
 どうしたものかと悩んでいた時にもらった誘い。
 良い機会だと思った。
 フィリネグレイアは外の世界に目を向けるべきだ。彼女が自ら入っている箱の中から出れば、きっと驚くほど多くのものを吸収して大きく成長するだろう。
 それは決して幸せなことばかりではなく、辛く悲しいことも多くあるだろう。苦境に立たされる彼女を守る役割を、自分はもう果たせない。なにより、自分よりも彼女の世界を守ってくれる存在をラオフェントは知っている。
 自分との未来よりも、必ず彼女は幸せになれる。
 この時のラオフェントは、そう、確信していた。

異界の少女 ツェツィーリアの話


 濃い霧の中をどのくらい歩いただろう。
 自分がどこに向かい、何のために進んでいるのか分からなくなった頃、目の前の霧が晴れ、とても綺麗な空が見えた。

 青い青い空。
 ずっと長い間、空を見上げる事なんてなかった。

 空からは恐ろしいものが落ちて来るから。
 大切なものを奪っていくものがやって来る空が、大っ嫌いだった。

 なのに、久しぶりに見た空は、とても綺麗で。
 どうしようもなく、涙が流れた。

① 異界の少女 ツェツィーリアの話


 この世界に来て、 私は初めて恋を知った。

 今日は私を保護してくれた国の王子様の結婚式。

 私は初めての恋に、別れを告げる。
 新しい一歩を踏み出すために。
 いつもそばで支えてくれた、彼と向き合うために。


 ある日、ある国で、一筋の光が地上から空へと現れた。
 それは、この世界とは異なる世界から人が渡って来たことを知らせる光。

 光の下には一人の少女がいた。
 異界からやって来た少女。
 異界の者は幸運をもたらす。
 古くからの言い伝えから少女を守るため、国を護る騎士が少女を保護し、王宮へと連れて行く。
 連れて来られた王宮で、少女は一人の王子と貴族の令嬢と出会った。

理不尽

それは気持ちの良い秋晴れの日
非日常は唐突に現れた

私の日常をいとも容易く塗りつぶしていくそれを
無かった事には出来なくて

私の日常が塗りつぶされて
過去を呼び覚まし
私の世界が広がる

望んだわけでもないというのに
広がっていく

塊の正体

「白木さん!どうしたんですか、てあれ?」
 大きな塊を挟んで反対側から目の前の男性、白木と同じ様な服装をした若い男性が走ってきた。
「ここはまだ結界内ですよね。って事は、この子結界内に入り込んで来たんですか?」
「状況から考えると、そうなるな」
「それって結構ヤバくないですか?一般人が入り込める状態って事ですよね」
「そうとも限らない。力のある奴が誤って入ってしまう事は稀にある」
 白木の説明に若い男性はへーと感心の声を零す。
「ん?と言う事はあの子能力者ですか」
「その可能性が高い。あいつの結界がこんな短時間で弱まるなんて有り得ないからな」
「ああー・・・見つけちゃった以上、連れて行かないとダメですよね」
 若い男性が困り顔で白木を見る。白木はただ黙って頷いた。
 自分の意思と関係ないところで何やら自分に関する事が勝手に決められている気がした。
 何時までも呆けている場合ではない。
「あのーあそこにある塊って、何なんですか」
 言葉を発すると二人がこちらを見た。視線が集まった事に居心地の悪さを感じる。
「オニだ」
 じっとこちらを見ていた白木が良くとおる声で一言、告げた。
「鬼って、昔話の桃太郎とかに出てくるあの鬼ですか」
 至極真面目な顔で非現実な事を言うものだから、頭の中に浮かんだ「何を言っているんだこいつは」という言葉は音にならず、眉間にしわを寄せて別の事を聞く。
 こちらの表情から彼の言葉を全く信じていない事は伝わっているだろう。実際に現実的で無い物が目の前にあるとしても、彼の言葉を「はい、そうですか」と素直に受け止められはしないのが普通だ。
「厳密には違うんだけど、まあ、同じようなモノとして理解して良いよ」
 若い男性が苦笑を浮かべながら言った。

月下の出会い


 その時、背後から大きな騒音と共に体を押すほどの強い風が襲い掛かり思わず数歩前に進む。
 何が起こったんだと後ろを振り返ると、先ほどまで無かったモノが広場の中央にあった。それは土埃が舞っていてはっきりと姿が見えないが大きな塊の様だ。
 あまりの突然の出来事に頭が働かず、逃げるという行動すら思いつかずに、土埃の向こうにある非日常をただ、じっと見つめていた。
 どれほど時間が経ったか。
 舞っていた砂の多くが地面に戻って行き始めた時、大きな塊の一部が動いた。
 まだ少し土埃が残ってはいるが、月明かりに照らされて、それが何なのか十分に分かる程度までには治まっていた。
 どうやら動いたモノは大きな塊の上に乗っている、人だったようだ。
 一瞬のうちに襲い掛かってきた驚きが落ち着いてくると、どうやら脳は思考を止める様で、ぼんやりと起き上がった人を見つめ続ける。
 そうしている内に塊の上にいる人がこちらに気づいたらしく、塊の上から降りてこちらに来る。
「あんた、此処で何をしているんだ」
 声を掛けられた事で反射的に体がビクリと震えた。
 動き出した思考は混乱していて、言わなければならないと分かっていても、言うべき言葉が出てこない。
「新人、じゃないよな。一般人か」
 目の前まで来た人は男性で、暗闇の中に溶け込めるような黒い服を身にまとっている。今は月の光の下にいるので、逆にその黒が浮き上がってしまっている。
 月に照らされた男性を見て、ふと綺麗な人だなと思った。当然そう思った時には、突然大きな塊と共に公園の真ん中に現れた不審者などという事は頭の中からすっかりと消えていた。

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