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第十八話の没にした話


 ここで自己紹介をした方がいいのだろうかと思いつつ、聞かれたら答えようという姿勢で青年と対峙するという考えに至った。
 この場をどう切り抜けようかと考えているうちにフィリネグレイはじっと青年を見ていた。そして青年も、フィリネグレイアを見つめている。
 そのまま、長い間二人は無言で見つめあう。もしこの場に他の人がいたら不審に思うだろうほど、二人は無言でお互いを見ていた。
 その沈黙を破ったのは青年だった。

「初めてお会いしたのにこのような事をお願いするのは無礼だと十分承知しておりますが、もしよろしければ、また此処でお会いできないでしょうか」

 青年の誘いにフィリネグレイアは驚いた。彼は自分が何者であるか知っているだろうに、何故自分と会う約束をしようとしているのか。彼女には分らなかった。
 これは情報を得る絶好の機会であると同時に危険である。
 まだ王妃候補でしかない彼女が男性と二人で会っているという事が、他の人に知られれば厄介だ。せっかく決まった事が全て水の泡になってしまうのだ。それでも、彼から得られるだろう情報の価値を考えると、そのような事にならないよう根回しをする苦労を買っても良いと思ってしまう。
 結局フィリネグレイアは青年の提案をのむことにした。

「はい、喜んで」

 青年は断られるかも知れないと思っていたのだろう。了承の返事を言うと明らかに体に入っていた力を抜くため、溜息を吐いた。
「明後日の今日と同じ時刻に予定はありますか?」
 その日の予定を思い出してみるが、特別な予定は聞いていないし、今の時間帯は午後の授業も終わっているし特に問題はない。その事を青年に伝えると、彼は嬉しそうに微笑んだ。

「では、明後日のこの時間に、ここの書庫の前でお会いしましょう」

 青年の嬉しそうな笑顔に罪悪感と疑問を覚えながら、フィリネグレイは応える。

「分りました。楽しみにしていますね」

 その後、青年は用事があるからと書庫を出て行、フィリネグレイアは数冊の本を借りて書庫を出た。








 なんかもったいなかったんでUPしてみました。
 

 


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