零れ話
ポッと浮かんだ話を無責任に投下。
覚悟、決心、絶対に勝つ
さて、1人残されたフィリネグレイアだが、彼女はまだその場に止まる事を選択した。再びしゃがみ込み、カポネラを見つめる。
だが、今回はしっかりと思考し、考えをまとめようとしている。
上王と王太后は国王とフィリネグレイアの様にさまざまな思惑のもとで結婚した。その原因は公然の秘密となっているのだが、それをフィリネグレイアは王女から聞いていた。
王太后は生まれてからずっと体が弱く、本当なら王妃になる予定は無かったが、彼女の持つ素質に目を付けた臣下が彼女を王妃として国王の伴侶に選んだらしい。詳細は王女もよくは知らないらしいが、やはり何回も衝突があったようだ。それでも、彼らはお互いに想い合い、支え合い、長い年月を共に生きて来た。
ならば、始まったばかりの自分たちはまだ諦めるには早いのではないか。
国王に本当に大事な恋人がいたとしても、いないとしても、自分の気持ちをはっきりと伝えてやろう。
それで王妃候補から外されてしまっても、その時はその時だ。
国王とその恋人と自分という関係を、深く考え過ぎていなかったか。相手のためだと思い込んで、自分を窮屈な枠の中に押し込めていなかったか。
今は深く考えすぎず、もっと単純に、自分の気持ちに素直になった方が良い方向に進んでいきだ。
国王が契約違反だと言って訴えてきても知るか。あの人が何度も自分を惑わすような行動を起こさなければ、このような事は起こらなかった。自業自得だ。
戦ってやろうじゃないか。
その為にはまず自分を周囲に認めさせ、容易に自分を今の立場から外せないようにするのが効果的だろう。行動の読めない国王よりも簡単に対応できる。
その為の布石はここにきて着々と用意していた。それを今発揮するときなのだが。さて、行動を起こすならミュレア達を呼んで作戦会議を開かなければ。勝手に行動したら烈火のごとく怒られてしまう。最近はミュレアに加え、彼女に程良く教育された侍女たちや、挙句の果てには女官であるサヴィアローシャにまで小言を言われるようになってしまった。この前は、王宮に出入り出来る下働きの人たちの間に入れてもらって話を聞いていただけなのに、フィリネグレイアを探しに来たトリエに恐ろしく可愛らしい笑みを浮かべたまま部屋へ強制送還された。ミュレアには呆れられ、サヴィアローシャにはどうしてそのような行動をしたのかと問いただされた。女性の働く環境を作る為の情報収集だと反論すると、それらは自分たちがする仕事だと、まさに火に油を注いだ状態になってしまった。
とりあえず、フィリネグレイアのお披露目を兼ねた宴はもう目の前まで迫っている。これを乗り越えれば後は婚儀まであっという間だ。
それまでに決着を付けてやる。
久しぶりに自分らしさを取り戻したフィリネグレイアの目は生き生きといていた。そう、彼女の腹心が見たらきっと大変な事を仕出かすつもりだと危惧するほどに。
彼女はこれからどう行動しようかわくわくしながら思考を巡らせながら部屋へ戻っていった。
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