零れ話
お互いの空白を埋めよう
久しぶりの彼女との会話はとても楽しいものだった。
会っていなかった間の事を私たちは夢中で話した。
あんな事があった、こんな事もあった。
あの時こう思った、これはこうなった。
たくさんの話は尽きる事無く、私たちは話をした。
最初は近くにあった喫茶店に入り話をしていたのだが3時間経ったところで流石にこれ以上いられないと場所を移した。
向かったのは私が住んでいるアパート。
高校を卒業したあと、私は都会の大学に進学し1人暮らしを始めた。
彼女はどこに住んでいるのかと聞いたら、私の住んでいるアパートの最寄り駅から4駅程いった所が最寄駅のマンションに住んでいると答えた。彼女は専門学校に進み、服飾の勉強をしているらしい。
「はあ~。こんなに話し続けたのは初めて」
「長い間会っていないとこんなに話す事があるんだね。なんだかすっきりしちゃった」
彼女の言葉に私はうんうんと頷く。
私は誰かと話していても物足りなかったのが解消されたような感覚を覚えていた。
でも、1つだけ私の中で彼女に伝えたい事が残っている。伝えたいと思う反面、言い辛い事。
彼への恋心とそのために彼女を避けていった事。
この事を言おうか言わないでおこうか私は悩んみ、ずるずると決断を先延ばして未だに踏ん切りがつかない。
そんな私の考えは彼女の次の発言で吹っ飛んだ。
「私ね、ずっと奈々ちゃんに聞きたい事があったの」
今までと明らかに彼女の雰囲気が変わった。
その事に私は身を固くした。
予感が、した。
「高校の時、私の事避けてた?」
聞かれたくなかった事。
触れられたくなかった事。
でも、話したかった事。
彼女がきっかけを作ってくれた。
手が、震える。
私は口を開いた。
「うん。あの頃の私には美春に会うのが辛かったから」
遂に言ってしまった。
胸が痛い。
この言葉が彼女を傷つけると分かっているから。
案の定、彼女は泣きそうな顔をしている。
「私、奈々ちゃんを傷つけてた?」
彼女の問いに、私は頭を横に振った。
「ううん。美春が悪いわけじゃないの。私が自分の感情を優先しただけ」
私は泣きだして話せなくならない様に、感情を爆発させないように、ゆっくりと話す。
あの頃の彼への想いを。