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王国恋愛物語?


「あー、なんか面白いことないかしら。」

 やる気のまったくない声を出し、組んだ足の上にひじをついて手の上にあごをのせるというはしたない格好をしているのは、このステンビア王国の第一皇女である。

「またそのようなことを仰って。午後には貴族のご令嬢とのお茶会があるではありませんか。それと、きちんと姿勢を正してくださいませ。」

 いつものように、長年一緒にいる姉のような存在の侍女に注意される。とりあえず姿勢を正すが、まだぶつぶつと文句を言う。

「イシス?あの、宝石やらドレスやら自分の自慢話や、噂話しかしないお茶会が面白いと思う?まだ、古狸の巣窟の会議を見学しに行ったほうが面白いわ!」

 姫の性格を熟知しているイシスは昼食の準備をしながら苦笑した。

「そう言われますが、お茶会も貴婦人としてのたしなみです。つまらないとお思いの噂話の中にも、重要なことが含まれている可能性があるのですよ?王族の勤めだと思って諦めてください。」

「王族の務め、ね…。」

「さあ、準備が整いました。いつまでも不貞腐れてないでお召し上がりください。」

 深く溜息をつき、フィリアナ姫はそれまで座っていた椅子から立ち上がった。昼食が用意されたテーブルに向かい、椅子に座る。

「まあ、しかたないか。」

 ぼそりと呟いた言葉は、誰の耳にも届かず、他の音の中に混ざって消えた。





「まあ、なんと綺麗な首飾りでしょう!どちらでお手に入れたのですか?」

「コレは先日、お父様がネスティア地方にお出掛けになったさい、私のためにそこの職人に作らせたものですの。」

「どおりでよく似合っておいでだわ。羨ましいですわ。」

「あなたのその耳飾り、とても美しいではないですか!もしかして、それは今流行のフィッツェアのものではなくて?」

「おわかりになりまして?私の誕生日に婚約者の方から頂きましたの。」

「まあ、羨ましいですわ。」

 皆が笑いあうなか、フィリアナはつまらなさそうにお茶を飲んでいる。しかし、我関せづを貫き通いしていたフィリアナに1人の令嬢が嫌味ったらしく言い放った。

「そういえば、いつもフィリアナ様は質素な格好ですのね。」

 無礼なもの言いだが別段フィリアナは気にしない。この貴族の令嬢もそれが分かっていての発言だろう。
 話の矛先が自分に向き、フィリアナは『来たな』と少しうんざりした気持ちになる。まあ、そんなことを顔に出すようなへまはしないが。

「私、そのような装飾品に頼って己を強調したいとは思いませんの。過度の装飾品で自分自身の輝きを濁してしまうような愚かなことはするなんて私には真似出来ません」

 おほほほほー、と暗に『私はお前らより綺麗なんじゃ』という挑発しかける。
 案の定、貴族の令嬢たちはものの見事に固まった。
(約一名、そ知らぬ顔でお茶を飲んで和んでいた奴がいるが。)
 そんななんとも言えない雰囲気に満足して、再びお茶を一口飲む。うん、おいしい。
 お茶を堪能していたら、先ほどフィリアナに嫌味ったらしく言い放った令嬢が、我に返って再び言い放つ。

「お可哀想に。フィリアナ様は装飾品の輝きに負けておしまいなのですね。」

 よよよ、とハンカチで目元をおさえこう言われた。きたきた、反撃がないと面白くない。後でイシスに怒られそうだが、内心にやりとほくそ笑む。

「あら、でもその輝きに負けている事に気づかない誰かさんよりは、そのことに気づいて自分にあっている格好をする方がよろしいんではなくて?」

 そうして、言い返してきた令嬢と乾いた笑い声を上げる。他の令嬢たちは居心地悪そうにしていたが、そんなこと知ったこっちゃない。
 令嬢たちの反応を楽しみながら過ごしていると、そろそろ時間だと侍女が終りを告げに来た。
 面白くなってきたのだが、仕方ないので退室の挨拶をしてサロンを出て行く。やっと開放されるなんて、1ミリも思ってませんよ?ええ、本当ですとも。


 


 部屋に入ると、さっそくイシスに小言を言われた。

「お疲れ様です姫様。またサヴィアナ様と言い合いをなさったそうですね。」

 なぜもう知っているのかと驚く。なんと情報をつかむのが早いことか。

「あれほど、ご関係を悪くするような発言はお止めくださいと申したでしょう。もうお忘れですか?」

「あまりにもつまらない話ばかりするもんだからつい、ね。」

「そんなことばかりしてると、周りが皆敵ばかりになるわよ。」

 笑いを含んだ声が後ろの方から聞こえる。振り返るとそこにはサロンにいた令嬢の一人、ラナがいた。

「ラナ様、そうお思いならフィリアナ様をお止めになってください。」

「ごめんなさい。つい、面白くて傍観してしまったの。」

 本当に楽しかったらしく、クスクス笑いながら言う。一応謝ってはいるが形だけのようだ。

「あんたもなかなかに腹黒いからね。」

「あら、いやだ。第一皇子殿下よりはマシです。」

「まあ、そうだけど。」

 ラナの言うとおり、第一皇子であるフィリアナの兄は古狸どもと対等に渡り合えるほど、何を考えているのか全く予想がつかない。フィリアナも何度、あの人の手の上で踊らされたことか…涙ものである。
 自分が仕えている皇族の皇子を腹黒いといわれ、それを否定する事もできず、なんともいえない顔をしているイシスは、とりあえず訪れた客人をもてなすため、お茶を入れに退室していった。

「そういえば、今日どうして私の部屋に来たの?」

 2人はそれぞれ、フィリアナの部屋にある椅子に座る。

「何か用事がなければ来てはいけないのかしら?」

「いや、普通はそうだろう。」

「私に普通とかいうものを求めても無駄だと、長い付き合いになるのに知らなかったの?」

「ああ、そうでした。私がアホでした。」

 不敵に笑うラナを見てフィリアナはこめかみに指をあてる。軽く息を吐いて、今度は至極真面目な目でラナを見る。

「でも、ラナ。あんたは何の用事もなくここにくることはないわ。」

 すると、彼女は深い溜息をついた。

「お父様から聞いたんだけど、あなた、リティア国に嫁ぐそうね。」

 ラナの父は国王の忠臣の1人である。その縁で昔からラナと過ごしていたのだ。まあ、幼馴染というものだろうか。
 それにしても、まだラナに伝わってなかったのかとフィリアナは少し驚いた。それが決まったのは、もう3ヶ月前だ。

「うん、まあねぇー。そういえば、最近までおじ様の領地の方に行ってたんだっけ?」

 当の本人であるフィリアナはあっけらかんとした様子で答える。

「そうよ。手紙の一つや二つ寄こしてくれてもよかったんじゃない?」

 恨めしそうに、フィリアナにいうが、まあそんなことはいいのよ、と話を続ける。

「あなたいいの?この国を離れることになるのよ?」

「もう決まった事よ。来月には出発するわ。あっちに行くとなかなか帰れなくなるわね。なんたって皇太子妃になるしね。」

 コロコロ笑うフィリアナに、さすがのラナもあきれた。

 
 
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