零れ話
ポッと浮かんだ話を無責任に投下。
信じてほしい想い 届かない願い 1
生まれたときからの許婚。
私とあの人の関係の始まりは、それに近いものだった。
私は生まれた瞬間、篠田家に引き取られた。自分を生んだ人間がどのような人なのか、なぜ私が篠田家に引き取られたのか、未だに私は知らない。
きっと私から養父らに聞けば、彼らは隠さず全て教えてくれただろう。だが、そのようなことを聞いて何になる。
私を育て、愛しんでれたのは篠田家の人々だ。
そして、篠田家の人々以外にも幼いころから私を可愛がってくれた人がいた。
その人は篠田家と懇意にしている天城家の次男で、5歳年上の彼は私の良き遊び相手となってくれていた。
今思えば、彼を頻繁に家に呼び私たちの仲を親密なものにしたのは、将来結婚する者同士にしたいが為であったのだろうと分かる。
その目論見は見事成功し、彼は私の心に大きな影響を与える存在となった。また、彼に対しても自分はそういう存在なのだろう。
それの認識が間違っていたとは今でも思わない。
私が中学生、彼が高校生の時。
彼が私に紹介したい人がいると言い、一人の少女に合わせてくれた。
笑顔の美しい、少女だった。
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