零れ話
いつか来る日
すみません、陛下を見かけませんでしたか?
陛下なら先程までここで兵たちの訓練をご覧になっておられたが
厨房の方へ行くと言っておられたぞ
すみません、陛下はこちらに居られますか?
陛下なら先程いらっしゃいましたが、少し前に出て行かれましたよ
中庭の方へ行かれるのを見ましたけど
すみません、陛下を見かけませんでしたか?
ああ、陛下ならちょっと前に城の方にお帰りになられましたよ
・
・
ああもう!あの方はどこに居られるのだ!!
はいはい、今日は陛下の休日だからなかなか捕まえられないのはしかたない
でも、もう何時間も探してるんですよ!?どうして会えないんですか!!
そりゃ上手く逃げてるんだろ
どうして
仕事したくないから(×2)
な!
以前仕事のし過ぎで王妃様に怒られて懲りたみたいだから
そうですね、あれは強烈でした
あの、王妃様が陛下をお怒りになられたのですか?
そ、あの王妃様が
何時間も駆けずり回ったお前に一つ良い事を教えてやる。今なら陛下はきっとあそこに居るぞ
あそこ、とは?
あのな…
教えてもらった場所は城の隅にある庭園の東屋だった。
そこに向かうと、中に一人の女性を見つけた。その方の方へ向かい、こちらに気付いた女性に礼をする。
女性は笑顔で肯き、近づく許可をくれた。
更に歩みを進めると、女性の膝に頭を乗せている陛下が穏やかに寝ておられた。
静かにという意向を伝えるため、口元に指を当てる女性の表情は優しさと陛下に対する愛情で溢れていた。