零れ話
ポッと浮かんだ話を無責任に投下。
呼び声
「フィリア」
そうわたくしを呼ぶのは、一人しかいない。
振り返ると、やはりあの人が立っていた。
「こんなところで何をしているんだ」
「花を、見ていました」
以前出会った庭師が大切に植えてた花。
傲慢に、自然の理を変えてまで育てた、花。
自惚れているのかもしれないが、なぜか自分とこの花を重ねてしまっている。
「そんなところに長時間いたらまた倒れるだろう。こちらに来い」
結婚する前と今では、夫の態度が変わった。以前はたまに荒くはなるが、大抵丁寧な言葉遣いだった。その使い分けが以前は気持ち悪く感じていた。
今は、あの頃の方が良かったと思っている。まだ距離感がつかめていた。だが、今はどうだろう。分らない。
分らないことが、怖い。
ぼんやりとそんなことを考えながら、自分に差し出された手のひらに自分の手を乗せる。
いつまで自分はこの手を堂々ととることが出来るのだろう。
理を歪ませ納まった、王妃という地位に…いつまで座っていられるのだろう。
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